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あり得ないものにリアリティを与える小説(3) 虹を操る少年 [本・ムック]

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いまやベストセラー・ミステリー作家の東野圭吾氏が、まだそれほど売れっ子でなかった頃書いた1997年の異端のSFファンタジー。
東野作品としては、決して本流のミステリー小説ではないので、そうした面白さを期待する人は読まない方がいい。

この小説には、光を演奏してメッセージを送る「光楽」という概念が登場する。
この想像を超えた「光楽」という概念を、きめ細かなディテール描写と、伝奇的なウソを活用し、リアリティを持って描いている。

主人公の光瑠少年は、その「光楽」を作り、伝える能力が自分に備わっていることを知り、「光楽」を演奏するイベントを行う。すると、一部の若者を覚醒させ、彼らがさらに新しい「光楽」を生み出し始める。

「光楽」が理解できない一般の人間にとっては、一種のカルトのように見えるため、「光楽」は迫害され始める。

若者を熱狂させる「光楽」とは何なのか、それを理解できることの人類史的意味が、後半、読者にも理解できる形で明かされ、未来を暗示する形で終わる。

元々、子供向けに書いたジュブナイル小説だったそうで、その意味で人物描写が甘い面もなくはないが、内容的には、サスペンス要素で引っ張る本格SFの傑作だ。
なぜ、当時、SFプロパーに、この小説がほとんど評価されなかったのかが、不思議とも言えるほどだ。

ちなみに、文庫の解説は井上夢人氏で、井上氏と東野氏がいかに相互に強い影響を受けているかがよく分かる解説だ。




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