彼らのアルバムについて、特に、昔、T-SQUAREがまだTHE SQUAREを名乗っていた時代は「幕の内弁当」みたいだという批判がよくされた。

派手なイントロから、ポップなメロディーラインの曲が始まり、「これぞシングル盤用」という売れ線の曲を交えて、ジャズ色が強い曲、ロック色が強い曲など、バラエティ豊かなラインナップが並び、最後に、バラードで締める。
そして、ヒットを狙った曲が、テレビなどのテーマ曲に採用されてシングルカットされ、それを持ってツアーを敢行し、まさに幕の内弁当的なセットリストで、全国を巡る。

前にも書いたが、当時のTHE SQUAREの音楽は、ジャズの即興演奏よりは、主旋律の方を重要視し、まるで歌の構造を持つ曲も多かったから、単なるジャズファンの枠を超えて人気もあり、CDもよく売れ、ライブも大盛況だった。

それに対し、主にジャズという音楽ジャンルの立場から批判をする人も多く、特に、伝説のジャズドラマー・村上"ポンタ"秀一が、THE SQUAREの音楽を、あからさまに「こんなものジャズじゃない」と批判していたのを覚えている。

それは、結果的に、半分は当たっていたが、半分は外れていたと思う。

確かに、THE SQUAREの音楽は、ジャズの世界から見れば、力量不足でもあり、異端で物足りないものだったかもしれないが、決して売らんがために作っていた訳ではないと思う。
当時の安藤まさひろは、彼が好きな、他にはない音楽性を追求したに過ぎず、それがジャズの枠をはみ出していただけだろう。
彼はそれを今も頑固に続けており、他の音楽ジャンルに分類できない、独自の音楽世界を新たに作ったとさえ言える。

ただ、そう思う私も、THE SQUARE時代のCDのラストを飾るバラード曲は、あまり好きではなかった。