作曲家・小林亜星さん死去 88歳 「北の宿から」など | 毎日新聞作曲家・小林亜星さんが、2021年5月30日、心不全のため亡くなった。享年88歳だった。
亜星さんというと、まずは作曲家であり、そして、俳優として有名だが、私的には、一番印象に残っているのは、JASRACの問題に、最初に立ち向かった人であることだ。
JASRACの黒歴史にちょっと触れてみる:栗原潔のテクノロジー時評Ver2:オルタナティブ・ブログ亜星さんは、1994年に、日本で当時唯一の音楽著作権団体であったJASRACで起きた、一部のメンバーの私物化問題に、先頭に立って声を上げ、改革を迫ったのだ。
古賀政男財団に対する不正融資の問題があることが分かったり、当時の著作権印税の配分が、明らかに演歌などを優遇し、ロックやポップスに不利な制度になっていたのも、当時の彼の主張から知った。
この騒動をきっかけに、音楽著作権団体の設立が自由化され、JASRAC以外の音楽著作権団体が生まれることになったし、印税の配分の問題も改善されたのだから、亜星さんの功績は大きかったと思う。
亜星さんの音楽面での実績というと、歌謡曲、CMソング、児童向けソング、アニメソングという4つの大きなジャンルで、それぞれ永遠の名曲を多数生み出していて、もちろん、私の心にもしっかり刻まれている。
まずは、CMソングから。
「日立の樹(この木なんの木)」は、勘違いしている人も多いみたいだが、日立製作所の社歌ではない。
日立グループのイメージソングでしかないのだが、企業CMの歌としては、企業イメージをうまく表現した歌詞も、覚えやすく歌いやすいメロディも、曲にぴったりのCM映像も素晴らしく、永遠の名曲と言えるだろう。
サントリーの「夜がくる」、レナウンのCMソング「ワンサカ娘」、明治製菓の「明治チェルシーの唄」、ブリヂストンの「どこまでも行こう」など、どれも耳に覚えがあるものばかり。
CMソングでは、亜星さんが作曲だけでなく作詞も手掛けている曲が意外に多いのが、こうした職業作曲家としては、珍しいかもしれない。
その意味では、作詞作曲編曲だけでなく、自分で歌い、出演までしてしまった「パッ!とさいでりあ」は、亜星さんにとって、究極のCMのお仕事だったと思う。
歌謡曲では、
日本レコード大賞を取った都はるみの「北の宿から」が代表曲ということになるのだろうが、
ダ・カーポの「野に咲く花のように」も名曲だな。
個人的には、アントニオ古賀の「十円チョーダイ!」が好きで、今でも印象に残っていたるする(残念ながら、動画は見つけられなかった)。
児童向けの歌としては、NHK教育などの番組テーマ曲なども多く、
「ピンポンパン体操」は、その世代の人は、皆知っているはず。
「まんが日本昔ばなし」エンディングテーマの「にんげんっていいな」も、亜星さんの曲だから驚く。
アニメソングも、名作ぞろいだ。
「魔法使いサリー」や、
「ひみつのアッコちゃん」は、奥さんから懐かしいという声が漏れていた。
私的には、「魔法使いサリー」は横山光輝、「ひみつのアッコちゃん」は赤塚不二夫の漫画原作であることを、改めて驚いたりもするのだが。
「ガッチャマンの歌」や、
「コン・バトラーVのテーマ」まで、曲調のバリエーションも豊か。
作曲家として名曲が多いのももちろんだし、JASRAC問題の時の言動でも分かる、真面目で筋を通す人柄も、好きだったなぁ。
それでいて、「パッ!とさいでりあ」のCMの変装、メイクでも分かるように、飾らない親しみやすい人でもあった。
ご冥福をお祈りいたします。
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