時間は1時間近くもあるが、全く長さを感じさせない、中身の濃いトークだ。
まずは、大吉さんの今回の採点方法について、最初に配点基準が明かされ、番組としての「流れ」や「会場のウケ」みたいなものは考慮せず、純粋にネタの出来と、漫才の技術そのものについて採点したという。
だから、トップバッターやウケたコンビの後だから損とかいうことでは、採点は左右されていないという。
その後、各コンビのネタと採点について説明があったのだが、一つ感じたのは、大吉さんの「漫才観」が強固にあるということで、「ロングコートダディ」「男性ブランコ」「ヨネダ2000」のようなネタは、「漫才のスタイルを利用した何か」であり、漫才のNo.1を目指すM-1グランプリにはふさわしくないと考えており、そのため点数が低くなるらしい。
この辺は確かにうなづける点もあり、例えば、「男性ブランコ」は、音符を運ぶネタについて、元々「コント」で作ったネタを漫才に作り直したことを明らかにしており、大吉さんは、それが「漫才という型を利用しただけ」と映ったのだろう。
難しいのは、あの音符を運ぶネタを、巨大な音符の小道具を作ってコントとしてやった場合の面白さと、物を使わず漫才の演技だけで、音符の動きを想像させる面白さは、全く違うこと。
漫才という形式だからこそ、客に音符の姿を想像させる、あのネタの面白さが出たと感じる部分もあるので、それも漫才の面白さと捉えてもいいのではないかな、と私は思う。
そこは大吉さんと意見を異にするところだ。
最終決戦の投票については、「ウエストランド」は「ツービード」、「さや香」は「やすきよ」の漫才を塗り替えたものと捉え、どちらが革新的だったかを考えた結果、「さや香」を選んだという選考過程には唸らされてた。
極めて分かりやすかったし、「さや香」に投票した理由も共感できた。
「M-1グランプリ 2022」を面白く見た人は、是非とも、このポッドキャストを聴いて欲しいと思う。
素人が、審査員の採点について批判するなら、勝手な想像に基づいて行うのではなく、まずはこうした審査の背景と真意を知ったうえで行うべきだろう。
ちなみに、個々の審査員について、自分の意見と違うからと言って、審査員を批判する素人も多いが、そういう人には一切共感しない。
M-1の審査員が8人もいるのは、様々な立場で違った観点で審査して欲しいからであって、信奉する「松本人志の採点がベスト」なのであれば、審査員は一人でいいじゃないか。
そうしたくないから、審査員が8人いるのであって、その中に自分と違う観点で評価する人がいても、それは当たり前。
それが分からない人というのは、おそらく日常生活でも社会性のない人なんだろうな、と思う。
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