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乙一さん、たまには小説書いてください [本・ムック]

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乙一(おついち)という作家は、すべてが好きな作品とは言わないが、嫌いな作品も含めて、他の作家では書けないオリジナリティにあふれている。
私が好きな作家には、好みの世界を書いてくれる作家と、自分の想像外の世界を提示してくれる作家があるが、乙一は明らかに後者だ。

長編「暗いところで待ち合わせ」 は、盲目の女性の家に、警察に追いかけられた男が潜り込むという設定がnice!
細かく見れば、「トイレはどうして気付かれずにしているんだ?」「咳やくしゃみもするだろ」とかツッコミたくなるところだが、読書中にそんなことを思い起こさせない、スリリングな展開で物語を引っ張る。最後のミステリー的展開は平凡といえば平凡だが、本作の主眼はそこになく、二人の心が通い始める中盤から、ラストへの展開は感動的で泣けてくる。

「失はれる物語」は、短編なのだが、事故でいわゆる植物状態になってしまった主人公が、唯一感じることができた手のひらの感覚だけで話が展開するという、読んだこともない独特の発想の小説。イメージ喚起力がすばらしく、極めて技巧的な小説なのに、最後は切なくて泣けてしまうのだから凄い。

短編集「平面いぬ。」に収録されている「BLUE」は、意志を持つぬいぐるみたちの中で、不出来なゆえに恵まれない人生?を送るぬいぐるみの寓話的物語。意地悪と不幸の連続というけれん味たっぷりのストーリーなのだが、最後には最高のカタルシスを迎え、泣かされてしまう。
この作品は、本気で、監督米林宏昌で、ジブリにて映画化して欲しい。

私は、乙一の作品群の中で、どうやら泣ける小説が好きみたいだ。

乙一は、寡作の作家なので、当然、すべての作品は読破しているが、ここ数年、オリジナルの小説を読んでいない。
そろそろ、たまには本格的な小説を書いてくれないかな。待ち切れないよ。

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