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あり得ないものにリアリティを与える小説(1) クラインの壷 [本・ムック]

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自分が大好きな小説のタイプって、いくつかあるが、その中でも、現実にないものをリアリティを持った文章で描き、本当に存在するかのように思わせてくれる小説が、特に好きだ。

リアリティというのは、細部のディテールに宿るものなので、その小説世界における独自ルールに矛盾や破綻があったら興ざめだが、それを感じさせない小説が好きなのだ。

そうした独自の世界の構築に成功し、しかも、面白かった小説をいくつかご紹介したい。

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まず最初に、もはや古典とも言える作品だが、岡嶋二人の「クラインの壷」から始めよう。

合作ペンネーム岡嶋二人による最後の作品だが、後のエッセイによれば、実質、今も一人で小説を書き続けている井上夢人氏だけで書いた作品らしい。

触覚、嗅覚、味覚などの五感を本物のように体感できる装置「クライン2」のテストプレイヤーとして参加することになった主人公に、仕掛けられた罠。
主人公は、罠から脱しようと、区別がつかない虚構世界と現実世界の間でもがき、彷徨うという、いわゆる「ヴァーチャルリアリティ」の設定をモチーフにしたSFミステリー。

今となっては「ヴァーチャルリアリティ」という素材はそれほど珍しいものではないが、この作品が書かれたのは1989年。
当時、「ヴァーチャルリアリティ」という言葉も概念もなかった。映画「トータルリコール」よりも古いのだから、作者の目の付けどころには恐れ入る。

スリリングなストーリーで、長さの割にあっという間に読めてしまうと思うが、「クライン2」があたかも本当に存在しているかのようなディテール描写が素晴らしいし、この小説独自の世界のルールに、本格ミステリーとしての伏線とその回収も、見事に調和している。

そして、最後に、もやもやするけど、背筋がひんやりと冷たくなる世界に旅立たせてくれる、これしかないだろうという結末。

今となっては、SFミステリーの古典とも言える作品だろう。




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