SSブログ

あり得ないものにリアリティを与える小説(4) 幻詩狩り [本・ムック]

スポンサードリンク





こちらは、本格SF作家、川又千秋氏による1984年日本SF大賞受賞作で、これも古いな~。



この作品、紙の本は入手困難だが、電子書籍で再刊されており、手軽に購入可能になった。
とっくに絶版になった本が、最近、ぽつぽつと電子書籍で再刊されるケースがあるのは、喜ばしいことだな。
今後も、この動きに期待したい。

名も無き若き詩人が書いた「読むと、恍惚となり別の世界に行ってしまう詩」をめぐる物語。
世界を記述する言語ではなく、世界を創造し、変容させる言語である「幻語」で書かれた「幻詩」という概念を提示する。

幻詩は、呪いのように人の心に取りつき、ドラッグのように人を荒廃させるが、こうした設定は、後のSFホラー「リング」を思わせる。

難解な設定の割には、面白い小説ではあるのだが、ここまで挙げた他の小説に比べると、幻詩のディテール描写が甘い(というか放棄している)。
その点で、リアリティの薄さが小説としての弱点と言えるだろう。

なにせ、小説中に幻詩の冒頭部分が書かれているのだが、「文字による呪い」という割には、書かれた文章からは、ゾッとするようなリアリティの片鱗が全然感じられないのだ。

そのため、小説全体として観念的で、SFではあるがエンタテイメントにはなり損ねていると思う。
もちろん、読んでいて、いい意味で頭脳を疲労させる小説であるのは間違いないのだが。

ここまで4作品を紹介してきたが、いずれも、文章から立ち昇る、あり得ない世界の広がりを想像することが大好きな人には、堪らない傑作群だと思う。

他にも、似たタイプの面白い小説はあるので、再読する機会があれば、改めてまた。




スポンサードリンク



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。