AIグラビア「さつきあい」の顛末 [著作権]
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AIが作るコンテンツと著作権・日本では?:コンテンツって言い方、嫌いだけど:So-netブログ
日本におけるAI生成コンテンツの著作権の取り扱いに関する方向性が明らかになった後、
『週刊プレイボーイ』AIグラビアに参入 “実在しない美女”さつきあいとは? - KAI-YOU.net
集英社が、同社が刊行する「週刊プレイボーイ」で、AIが生成したグラビア写真を掲載した。
実在しない美女を「さつきあい」と名付け、直後に、デジタルグラビア写真集も発売し、初のAIグラビアということで、話題を呼んだ。
大手出版社といえば、著作権で飯を食っている最たる企業であり、集英社だって、著作権に精通したお抱えの弁護士がいるはず。
彼らが、AI生成コンテンツについての日本の著作権法の解釈を踏まえて、しっかり議論した上で、この写真集の出版にGOを出したはずだ。
集英社、“AIグラビア”の販売終了 「生成AIの課題について検討足りなかった」 Twitterも削除 - ITmedia NEWS
ところが、この写真集、発売から1か月も経たないうちに、販売終了に追い込まれてしまった。
しかも、その理由について「生成AIの課題について検討足りなかった」としているのが驚きだ。
著作権を専門に扱ってきたはずの弁護士が、どんな検討が足りていなかったというのだろうか?
写真集が販売終了に至った理由について、分かる情報から考察してみたい。
まず、「さつきあい」のデジタルグラビアは、正確には、写したものではないから「写真」ではなく「デジタル画像」だ。
ただ、集英社も「写真集」と名付けて販売したし、中身を見ても、まるで本当にいる人間を写したかのような写真に見える画像であるのは間違いない。
そこで、「写真」というものの著作権について考えてみたい。
まず、日本の著作権法では、写真に限らず、文章でも、絵でも、それを作成した時点で著作権が発生する。
特に、コンテンツを登録する手続きなどは不要で、それを公開した時点で、もし、他人の著作権を侵害していれば、そこで、著作権侵害について係争することになる。
もう一つ、著作権というのは、著作物の実体の権利を保護するもので、その著作物が持つアイデアを保護する権利ではない。
写真で言えば、無断で他人の撮影した写真を複写したり、加工して利用したりすることは、著作権侵害となる。
しかし、例えば写真の背景や、建物や、人物などを含めた構図やだったり、人物だけ見ても、そのポーズなどが、他の写真に似ているとしても、著作権侵害にはならない。
例えば、冨嶽三十六景の構図を真似た「富士山を背景にした三保の松原」の写真は、これまでたくさんの人が撮影してきたが、似た構図でもどの写真がどの写真の著作権侵害になる、という議論は起きない。
また、とあるカメラマンが、新しいグラビアポーズを発明して、それでグラビア写真を撮ったとしても、同じポーズの写真を著作権違反だと言って訴えたりはできない。
著作権はアイデアを保護するものではないからだ。
さて、「さつきあい」のAIグラビア写真集においても、集英社は、当然ながら著作権上、問題がないことは確認していたはずだ。
【比較画像】さつきあい(AI)と浅倉唯(椛島光)が似てる!そっくりの理由は? - サクラブログ
ところが、月刊プレイボーイやこの写真集が発売されるとすぐに、実在しないはずの「さつきあい」が、実在する女性、中でも、浅倉唯というグラビアアイドルにそっくりだ、という意見が、SNSで広がり始めた。
確かに、ポーズや顔の角度によっては、見間違うほど似ているように、私も思う。
こうなると著作権の問題ではない。どちらかというと肖像権の問題だ。
これが生身の人の写真集なら、タレントAがタレントBにそっくりだとして、タレントBが写真集を出したからと言って、タレントAが肖像権侵害で訴えることなどできない。
ところが、AIグラビア写真は、正確には写真ではない。
AIシステムが生成した写真っぽい絵でしかない。
絵だとすると、特定の人物にそっくりでリアルな絵を作成し、その人物に承諾なく販売したら、肖像権侵害として訴える可能性が出てくる。
今回の場合、浅倉唯さんやその所属事務所が、実際に集英社を訴えたということはないようだが、値段を付けて販売をした写真集なので、損害賠償を請求される可能性さえあるだろう。
そこで、集英社側で素早く動き、速やかにAIグラビアの販売を終了し、SNSに掲載した情報も削除したものと思われる。
集英社も、AIグラビア写真が、著作権の問題はないと判断したのだろうが、まさか、その先にある肖像権の問題にまでは考えていなかったのだろうな。
集英社は、「さつきあい」を、わざわざ浅倉唯に似せて画像生成したわけではないだろう。
しかし、画像生成に利用したAIシステムが、どのような画像を学習し、それがどこまで関与して「さつきあい」の写真が生成されたかは、集英社としてはブラックボックスなので分かりようがない。
つまり、もし、肖像権侵害で訴えられたら、集英社は、反論する論拠をおそらく持っていないのだ。
集英社としても、今回の写真集発売は、AI生成コンテンツでビジネスを行うときの問題点を洗い出すためのトライアルだったのだと思う。
だから、重大な問題が発生した時点で、トライアルを速やかに中止することは、予め織り込み済みだったのだと思われる。
だから、速やかに販売を終了したのだろう。
実際、欧米や日本のAI生成コンテンツと著作権の議論については、色々な記事を発見できるが、肖像権に関する議論は、まだほとんど見かけない。
その意味で、今回の「さつきあい」写真集は、大きな意味あるトライアルであり、テストケースだったのだと思うな。
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集英社が、同社が刊行する「週刊プレイボーイ」で、AIが生成したグラビア写真を掲載した。
実在しない美女を「さつきあい」と名付け、直後に、デジタルグラビア写真集も発売し、初のAIグラビアということで、話題を呼んだ。
大手出版社といえば、著作権で飯を食っている最たる企業であり、集英社だって、著作権に精通したお抱えの弁護士がいるはず。
彼らが、AI生成コンテンツについての日本の著作権法の解釈を踏まえて、しっかり議論した上で、この写真集の出版にGOを出したはずだ。
集英社、“AIグラビア”の販売終了 「生成AIの課題について検討足りなかった」 Twitterも削除 - ITmedia NEWS
ところが、この写真集、発売から1か月も経たないうちに、販売終了に追い込まれてしまった。
しかも、その理由について「生成AIの課題について検討足りなかった」としているのが驚きだ。
著作権を専門に扱ってきたはずの弁護士が、どんな検討が足りていなかったというのだろうか?
写真集が販売終了に至った理由について、分かる情報から考察してみたい。
まず、「さつきあい」のデジタルグラビアは、正確には、写したものではないから「写真」ではなく「デジタル画像」だ。
ただ、集英社も「写真集」と名付けて販売したし、中身を見ても、まるで本当にいる人間を写したかのような写真に見える画像であるのは間違いない。
そこで、「写真」というものの著作権について考えてみたい。
まず、日本の著作権法では、写真に限らず、文章でも、絵でも、それを作成した時点で著作権が発生する。
特に、コンテンツを登録する手続きなどは不要で、それを公開した時点で、もし、他人の著作権を侵害していれば、そこで、著作権侵害について係争することになる。
もう一つ、著作権というのは、著作物の実体の権利を保護するもので、その著作物が持つアイデアを保護する権利ではない。
写真で言えば、無断で他人の撮影した写真を複写したり、加工して利用したりすることは、著作権侵害となる。
しかし、例えば写真の背景や、建物や、人物などを含めた構図やだったり、人物だけ見ても、そのポーズなどが、他の写真に似ているとしても、著作権侵害にはならない。
例えば、冨嶽三十六景の構図を真似た「富士山を背景にした三保の松原」の写真は、これまでたくさんの人が撮影してきたが、似た構図でもどの写真がどの写真の著作権侵害になる、という議論は起きない。
また、とあるカメラマンが、新しいグラビアポーズを発明して、それでグラビア写真を撮ったとしても、同じポーズの写真を著作権違反だと言って訴えたりはできない。
著作権はアイデアを保護するものではないからだ。
さて、「さつきあい」のAIグラビア写真集においても、集英社は、当然ながら著作権上、問題がないことは確認していたはずだ。
【比較画像】さつきあい(AI)と浅倉唯(椛島光)が似てる!そっくりの理由は? - サクラブログ
ところが、月刊プレイボーイやこの写真集が発売されるとすぐに、実在しないはずの「さつきあい」が、実在する女性、中でも、浅倉唯というグラビアアイドルにそっくりだ、という意見が、SNSで広がり始めた。
確かに、ポーズや顔の角度によっては、見間違うほど似ているように、私も思う。
こうなると著作権の問題ではない。どちらかというと肖像権の問題だ。
これが生身の人の写真集なら、タレントAがタレントBにそっくりだとして、タレントBが写真集を出したからと言って、タレントAが肖像権侵害で訴えることなどできない。
ところが、AIグラビア写真は、正確には写真ではない。
AIシステムが生成した写真っぽい絵でしかない。
絵だとすると、特定の人物にそっくりでリアルな絵を作成し、その人物に承諾なく販売したら、肖像権侵害として訴える可能性が出てくる。
今回の場合、浅倉唯さんやその所属事務所が、実際に集英社を訴えたということはないようだが、値段を付けて販売をした写真集なので、損害賠償を請求される可能性さえあるだろう。
そこで、集英社側で素早く動き、速やかにAIグラビアの販売を終了し、SNSに掲載した情報も削除したものと思われる。
集英社も、AIグラビア写真が、著作権の問題はないと判断したのだろうが、まさか、その先にある肖像権の問題にまでは考えていなかったのだろうな。
集英社は、「さつきあい」を、わざわざ浅倉唯に似せて画像生成したわけではないだろう。
しかし、画像生成に利用したAIシステムが、どのような画像を学習し、それがどこまで関与して「さつきあい」の写真が生成されたかは、集英社としてはブラックボックスなので分かりようがない。
つまり、もし、肖像権侵害で訴えられたら、集英社は、反論する論拠をおそらく持っていないのだ。
集英社としても、今回の写真集発売は、AI生成コンテンツでビジネスを行うときの問題点を洗い出すためのトライアルだったのだと思う。
だから、重大な問題が発生した時点で、トライアルを速やかに中止することは、予め織り込み済みだったのだと思われる。
だから、速やかに販売を終了したのだろう。
実際、欧米や日本のAI生成コンテンツと著作権の議論については、色々な記事を発見できるが、肖像権に関する議論は、まだほとんど見かけない。
その意味で、今回の「さつきあい」写真集は、大きな意味あるトライアルであり、テストケースだったのだと思うな。
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